英語が得意で本が好きなら、一度は「本を翻訳してみたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。出版翻訳者、あこがれますよね!
あこがれる人が多いこともあってか、出版翻訳はご存知の通り狭き門です。特に未経験者がデビューをつかむのは至難の業といえるでしょう。
デビューへの道としてよく聞くのが、有名な翻訳家の先生のもとに弟子入りするというもの。目標とする翻訳家がいる人は、その人のゼミに入ることもあるようです。でも、この方法は人生を賭けて取り組まないといけない感じがするし、なんだかお金も時間もかかりそう(個人のイメージです)。
「他に方法はないの?」という人に1つの道としておすすめしたいのが、アメリアの「出版持ち込みステーション」です。
この記事では「出版持込ステーション」について詳しくお伝えしたいと思います。
アメリアとは?
アメリアを知らない人のために、簡単に紹介しておきます。
翻訳者ネットワーク「アメリア」は有料の会員制サービスで、現役の翻訳者はもちろん翻訳者を目指している人も入会できます。
料金は税込みで
・入会金: 5,500円
・年会費:16,500円
と、なかなかのお値段ですが、年間1,500件もの求人にアクセスできるなど、翻訳者(志望)にとってはメリット満載です。
そしてそのメリットの1つが、「出版持込ステーション」を利用できることです。
出版持込ステーションとは?
「出版持込ステーション」を一言でいうと、自分の出版企画(出版したい本)を出版社に向けて効率的にアピールできるシステムです。
これだけだとイメージが湧かないと思うので、詳しく解説していきます。
持ち込みとは?
持ち込みとは、まだ日本語に翻訳されていない本を見つけて「これを日本で出版しませんか?」と出版社に売り込むことです。
こうした行動をどれだけ受け入れてくれるかは出版社にもよるようですが、中には持ち込みで出版翻訳者デビューが決まった人もいるそうです。自分が見つけた本でデビューなんて、夢がありますね!
でも、自分で出版社に売り込むのはとても勇気がいります。私は小心者なので、「電話? 郵送? 何って言えばいい? そもそも誰宛てにすればいい? 迷惑がられない?」と、ちょっと考えただけでも次々に疑問が出てきて、尻込みしてしまいます。
出版社に自分で持ち込みをするなんて、本当に尊敬します
出版持込ステーションのシステム
「持ち込みには挑戦してみたいけど、自分で出版社に売り込むのはちょっと……」という人におすすめしたいのが、「出版持込ステーション」です。
アメリアの「出版持込ステーション」の使い方は、次の3ステップ。
- 持ち込む本(原書)を探す
- 企画書を作る
- 企画書をアメリア事務局へ提出
これだけです!
ホームページには原書の探し方や企画書のテンプレートなどもあり、持ち込みについて何も知らなくても挑戦できるようになっています。分からないことがあっても事務局に質問すれば優しく対応してくれるので、私のような小心者も安心です。
こうして提出された企画は、アメリアのホームページの「企画書リスト」に掲載されます。
企画書リストを見た出版社があなたの企画に興味を持ってくれれば、検討開始。残念ながら検討の結果不採用となることもありますが、採用されれば持ち込み成功です。
ただし注意点がひとつ。それは、
企画が採用されても翻訳者として採用されるかは分からない
ということです。
企画が採用された場合、企画者には企画料が支払われますが、その本の翻訳者に採用してもらえるかは保証されません。その点は理解して応募する必要があります。
とはいえ、アメリアのホームページには「出版社は基本的に企画者に翻訳を依頼したいと考えているため、翻訳/共訳/下訳を依頼される可能性もあります」との記載があり、実際に多くの場合、企画者が翻訳者として採用されています。
企画が採用されれば、出版翻訳者デビューの期待大ですね!
出版持込ステーションのメリット・デメリット
概要が分かったところで、出版翻訳者を目指すために「出版持込ステーション」を使うメリットとデメリットについて解説します。
まずデメリットは
- 原書探しが大変
- 採用率は高くない
- 翻訳をさせてもらえるかは不明
- インパクトは個別の持ち込みの方がありそう
の4つです。上の3つは出版持込ステーションのデメリットというよりは持ち込みそのもののデメリットですが…。
一方、メリットは
- 気軽に挑戦できる
- たくさんの出版社に見てもらえる
の2つです。
デメリットについて
デメリットについては私の体験談を聞いてもらえればイメージがしやすいと思います。
私が「出版持込ステーション」に挑戦してみて一番苦労したのが「原書探し」です。そもそも持ち込みたい本が見つからなかったり、やっといい本を見つけたと思ったら既に日本で出版済みだったり……。
そしてようやく良い本を見つけて企画書を提出したのですが、残念ながら採用どころか検討にも至らず、今のところ企画書リストに掲載されただけで終わっています。私の企画に興味を持ってくれた出版社がいなかったということです。
でもこれは私が悪いわけではなく、そもそもの採用率が高くないのです。企画書リストには2024年3月25日現在で100を超える企画が掲載されていますが、検討中になっているのはほんの一部。検討してもらうことすら難しいことが伺えます。さらに検討中の作品も実際に採用されるとは限りません。2020年以降で採用された書籍は全部で7冊ということからも、決して企画採用は簡単ではないことが分かると思います。
また、前述のとおり翻訳者としての採用が確約されていない点は注意が必要です。多くの書籍で企画者が翻訳者として採用されているとはいえ、この点は理解しておく必要があります。
出版持込ステーションを使ってみて感じたのは、やっぱり
そもそも持ち込みは難しい
ということ。持ち込みは出版翻訳者デビューへの道の1つではありますが、決して楽な道ではありません。
それからちょっと思ったのは、
直接持ち込んだほうがインパクトはありそう
ということです。
企画書を掲載して待つとなるとたくさんの企画のうちの1つにはなるので、自分で出版社に企画書を持って行った方がインパクトはありそうです。……その勇気があればですが。私はいつか挑戦してみようかな、と思いつつ、多分しないと思います(笑)
メリットについて
出版社に直接企画を持ち込むのは勇気がいります。まして翻訳家の先生に弟子入りなんて、そうとうな覚悟を持った大勝負な感じがしますよね。出版翻訳者を目指す道は、心理的にも現実的にもハードルが高いものが多いと思います。
そういう道に比べると、企画書を決められたアドレスに提出するだけの「出版持込ステーション」は挑戦しやすいと思いませんか? 特に
テンプレートと明確な提出先がある
というのは偉大だと思います。
しかも提出先のアメリア事務局は優しく対応してくれます。「冷たくされたら心が折れそう」という繊細さんも安心して応募してください。
また、「出版持込ステーション」は一気に複数の出版社にアピールできるのも魅力です。自力で1社1社に企画書を見せて断られ続ける様子を想像すると、心底ありがたみを感じます。広くアピールできることで、それまで知らなかった出版社から連絡が来るかもしれません。
出版翻訳者を目指すために
「出版持込ステーション」を使ったからといって、簡単に出版翻訳者デビューできるわけではありません。そもそも持ち込みを採用してもらうこと自体が難しいからです。
ですが出版翻訳者を目指す人は、狭き門であることは覚悟の上だと思います。
持ち込みはデビューへの道の1つであり、出版持込ステーションは持ち込みのハードルを下げてくれます。夢を叶えたいなら、これを活用しない手はありません。
アメリアでは、「スペシャルコンテスト」をはじめとした出版翻訳に関連する求人が出ることもあります。そういう機会も待ちつつ、ぜひ「出版持込ステーション」にも挑戦してみましょう。
まとめ
今回はアメリアの「出版持込ステーション」についてご紹介しました。
持ち込みのハードルを下げてくれるサービスです。出版翻訳者を目指すなら、ぜひ使ってみましょう。
アメリアのホームページでは、ページ中ほどの「入会する5つのメリットを詳しく見る」から、今回ご紹介した「出版持込ステーション」や少しだけ触れた「スペシャルコンテスト」の情報を見ることができます。そのほかにも現役翻訳者や翻訳者を目指す人に嬉しい機能が満載なので、まだ会員ではない方はぜひチェックしてみてください。
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